頭の形について知る

赤ちゃんの頭の変形は病気?ゆがみの特徴、原因と実施すべき対策とは!

赤ちゃんの頭の形がいつの間にかゆがんでいたらびっくりしますし、不安になりますよね。

『生後2ヶ月頃、縦抱き授乳をしていた際に上から見た赤ちゃんの頭の形がいびつだった』と自分で気付く人もいれば、『母親から指摘され、インスタ等で他の子どもと比較して少し頭の形がいびつなことに気付いた』と親族に指摘されて気付く人もいます。

頭のゆがみがいつから発生しているのか、本当にゆがんでいるのかどうかも分かりにくいですが、赤ちゃんの頭の変形・ゆがみは外的要因だけでなく病気の可能性もありますので、注意が必要です。

本記事では、頭のゆがみが発生する原因を踏まえて、特徴やゆがみの対策を解説します。

 

頭の変形は大きく2種類に分類される

頭の変形は大きく分けて①外力による変形( 位置的頭蓋変形症 )②病気による変形(頭蓋骨縫合早期癒合症等)の2種類に分類されます。

圧倒的に多いのは①の外力による変形です。乳幼児突然死症候群(SIDS)対策として乳児の仰向け寝や横向き寝が推奨されており、これにより外力(長時間同じ体勢で寝る際の負荷)による頭の変形が増えてきているとの報告もあるそうです。※1

さて、①と②はそれぞれどのような特徴があるのでしょうか。 

 

外力による変形( 位置的頭蓋変形症 等)

新生児は生まれる際に産道を通るため,頭蓋冠を形成する骨は完全に硬くなっていません。柔らかく、空いている部分等もあります。

また、生後 6 か月までに頭蓋骨の成長の 50%が達成されることや、生後 9 か月までに頭蓋内容量は出生時の 2 倍になることがこれまでに報告されていることから、生後数か月間の頭部の成長はめざましいことがわかります。※2

外的要因による頭部変形の原因として、出産後の早期の重力や長時間同じ体勢の睡眠、向き癖等によって影響を大きく受けることが挙げられます。

これらの影響は、程度の大小はありますが多くの新生児が経験するものであり、軽度であればお子さまの睡眠時の体勢を頻繁に変えることや、後述するタミータイム等の時間を取ることである程度軽減することができます。

一方で、出産前に外的要因で頭部変形してしまうこともあります。

例えば、胎位や多胎等の子宮内の状態によって出産前から変形している場合です。胎児は腹部骨盤内の臓器と押し合いながら子宮内という狭い空間で大きく成長するため、頭部が変形する恐れがあります。

現に、女児と比べて体格のいい男児の方が発生しやすいとの報告や、出生体重が4,000g以上である高出生体重児に多いとの報告がなされているようです。※1

 

病気による変形(頭蓋骨縫合早期癒合症等)と頭部の形状

頭部の変形要因として、少数ではありますが病気が原因だったということもあります。

例えば、大阪母子医療センター脳神経外科による調査結果(※1 , 2022年4月~12月に頭の形の外来を受診した方)として、受診者64名中54名(84.4%)が外的要因による変形8名(12.5%)が外的要因以外(病気等)による変形だっと報告しています。

外的要因以外(病気等)による変形としては矢上縫合早期癒合(頭蓋骨縫合早期癒合症)や頭囲拡大(大頭症)、小頭症、頭血種等の例があり、治療を急ぐ必要のある病気もあるようですので、専門家による早期診断をオススメします。

頭蓋骨縫合早期癒合症:頭蓋骨縫合早期癒合症とは頭蓋骨縫合のどれか、またはいくつかが通常よりも早い時期に癒合してしまう病気
頭囲拡大(大頭症):頭囲が正常より大きいとされる医学的状態。原因として脳の内部の部屋に髄液がたまる水頭症等様々な病気が有る。
小頭症:正常より小さい頭部を伴う医学的状態。遺伝子異常や、感染症、脳の異常など、様々な病態によって引き起こされる。
頭血種:分娩時に胎児の頭蓋骨を覆っている骨膜の一部が剥離したり、血管が破綻して血液が貯留することでできるコブ状の腫瘤。

 

なお、頭部の変形の形状で外的要因か病的要因かを見分けられるという噂もありますが、これはお勧めできません。

日本形成外科学会のHPに記載の通り、頭蓋骨縫合早期癒合症はどの縫合線が早期に癒合するかによって頭の形が短頭、斜頭、三角頭、尖頭になったりすることがあり、外的要因の変形と明確な線引きができないためです。

 

頭が変形してしまったときは

頭部が変形していることに気付いたときはどうすればいいのでしょうか。

 

まずは専門家に相談する

先述した通り、頭部の変形が外的要因によるものなのか、病的要因によるものなのかが判断できないため、まずは医療機関等に相談して早期診断をしてもらうことが重要です。

外的要因の場合は頭蓋形状矯正ヘルメットによる治療ができますので、近くに「頭の形の外来」を受け付けている医療機関で受診することをオススメします。

 

自宅ですぐにできる対策

・赤ちゃんの寝る姿勢を適度に変える

赤ちゃんを仰向けで寝かせると、頭の自重で後頭部に圧力がかかってしまいます。長時間同じ方向・位置で寝ると頭の一部に負荷が偏りますので、意識的に姿勢を変えてあげましょう。赤ちゃんには胎内で身につけた向き癖があるそうですので、体の向きに偏りがないように適度に体位変換することが大切です。

・タミータイムを設ける(うつ伏せ時間)

タミータイム(Tummy time)とは赤ちゃんをうつ伏せにして過ごす時間のことです。のタミータイム は健康増進・頭部変形緩和効果が報告されており、世界保健機関(World Health Organization))は1 日合計 30 分以上のタミータイムを設けることを推奨しています。

ただし、窒息や乳幼児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome, SIDS)の危険性に留意して、赤ちゃんが起きている時に実施することが重要です。一日に数回、数分からでいいので、タミータイムを実施していきましょう。

 

頭蓋形状矯正ヘルメットによる治療

赤ちゃんの頭の形のゆがみを自然な形に改善するには、ヘルメット治療が効果的です。

ヘルメット治療は赤ちゃんの頭の変形に対して、医師の指導のもとオーダーメイドのヘルメットを作製し、入浴時・ヘルメットのお手入れ時以外の 23 時間、可能な限りのヘルメット装着を行い、これを数か月間続けることで頭のゆがみを改善させていく治療です。

生後3~7ヶ月の間に治療を開始することで高い効果を得やすい傾向にありますが、生後7ヶ月以を超えると有意に治療効果が低下する結果となったとの報告があります。※2

頭のゆがみが気になる場合は、早めに医療機関に相談しましょう

 

参考文献等

※1 位置的頭蓋変形でヘルメット治療指示書を希望する群は 斜頭グレードがより重度である(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspn/49/1/49_18/_pdf/-char/ja)

※2 新生児・乳児の頭蓋変形(https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/82/4/82_203/_pdf/-char/ja)

 

-頭の形について知る