新生児を仰向け寝で育てることが推奨され始めてから、頭が変形した状態で育つ子どもが増えてきました。
それに伴い、「頭蓋矯正ヘルメット」が2018年に日本でも認証され、昨今では数社から様々な見た目の頭蓋矯正ヘルメットが提供されています。
さて、各社のヘルメットに違いはあるのでしょうか。
頭蓋矯正ヘルメットとは?
頭蓋矯正ヘルメットとは、仰向け寝や横向き寝により一定に圧迫され、変形してしまった頭部に対して行われる治療に用いられるヘルメットのことです。
ヘルメットは基本的に頭の出っ張った部分に適度な圧力をかけてそれ以上成長しないようにし、一方で、平らな部分は保護してスペースを開けることで正常な形に頭の成長を促すような造りをしています。
ヘルメットは赤ちゃんに合わせてオーダーメイドで作製され、これを長時間(1日23時間程度、3~6か月間)装着させることで、赤ちゃんの頭の成長を正しく導きます。
ヘルメットによる治療は、生後3~6か月程度が適していると言われています。通常、頭蓋骨は生後7か月くらいまでに急成長し、その後も成長を続けますが、1歳を過ぎる頃には成長は緩慢になり、1歳半前後でその形状はほぼ定まります。
多くのヘルメットが8か月ごろを期限としているので、治療する場合は早めに始めるようにしましょう。
ヘルメット治療の種類と特徴、費用について
頭蓋矯正ヘルメットは国内数社から提供されています。
ヘルメット治療は自由診療ですので、費用が30~60万程度と高額になります。
基本的にはそれぞれ同じようなメカニズムで同じような流れでの治療になりますが、細かいところで違う点がありますので、よく確認してお子さまに適したヘルメット治療を行うようにしましょう。
アイメット(株式会社ジャパン・メディカル・カンパニー)
概要
米国製ヘルメットの取り扱いを2007年より行ってきた日本人医師が設計開発携わった、日本で最初に生まれた頭蓋矯正ヘルメットです。
2019年にグッドデザイン賞を受賞しています。
特徴
ヘルメット内部を特殊な低反発クッションで覆い、頭部を包み込むように固定されています。それにより、頭部にぴったりフィットして固定されます。成長させたい部分には空間を持たせた構造となっています。
ヘルメットの外側部分は、洗うことができます。
医療機器承認番号:30100BZX00022000
費用
医療機関によって異なりますが、おおよそ45~60万程度です。
例えば、PASSOクリニックさんでは49万円となっています。
クルム/クルムフィット(株式会社ジャパン・メディカル・カンパニー)
概要
日本で最初に生まれた頭蓋矯正ヘルメット「アイメット」の後継機として開発されたヘルメットです。カラーバリエーションが増えた他、インナークッションが洗えるようになったり、通気性が抜群に上がったりと進化しています。2022年グッドデザイン賞を受賞しています。
特徴
・お子さまの頭蓋健診/頭蓋矯正の最前線にいる医師とともに開発したヘルメットです。
・国産のインナークッションにより密着性がアップしています。
・水洗い可能で常に気持ちよく装着できます。
医療機器承認番号:30500BZX00256000、30300BZX00028000
費用
医療機関によって異なりますが、おおよそ45~60万程度です。
例えば、PASSOクリニックさんでは52万円となっています。大阪府済生会吹田病院では57.2万となっています。
スターバンド/スターバンド3D(株式会社AHS Japan Corporation)
概要
2000年にアメリカのOrthomerica社で生まれた頭蓋矯正ヘルメット。世界28か国で使用されており、60万人以上の赤ちゃんに利用されてきたと言われています。
特徴
矯正力が強いアクティブタイプのヘルメット(日本唯一)で、短期間での矯正や月齢の高いお子さまにも効果を発揮します。
義肢装具士がお子さまに合わせた形状に調整してくれます。
残念ながら、水洗いできません。
対象月齢は首がすわってから18か月までです。
費用
公式HPに金額の記載があり、スターバンドは44万、スターバンド3Dは49.5万となっています。
ベビーバンド(株式会社Berry)
概要
「あらゆる人が必要な時に必要な医療が受けられる社会の実現」を目指している医療機器ベンチャー企業の株式会社Berryが手掛ける頭蓋矯正ヘルメットです。Dプリント技術と3Dデータ解析技術を得意としています。
特徴
13種類以上のデザインがあり、おしゃれに着用できます。
水や中性洗剤で丸洗いできて衛生的です。
導入医療機関 業界トップクラスで、2025年1月現在、全国121期間で適用可能です。
医療機器承認番号:30500BZX00071000
費用
医療機関によって費用は異なりますが、診察や検査を含め約30~40万円と、他のヘルメットと比較して安価です。
ミシガン頭蓋形状矯正ヘルメット(グンゼメディカル株式会社※旧株式会社メディカルユーアンドエイ)
概要
アメリカのミシガン大学で確立されたヘルメットで、グンゼメディカル株式会社が販売している。ヘルメットはComputer Aided Design/Computer Aided Manufacturing(CAD/CAM)システム「オメガトレーサー」(ウィローウッド社、オハイオ州、米国)によるスキャン施行後、データを作成、ダンマー社(ミシガン州、米国)に発注すると、約 2 週間で医療機関に届きます。※1
2012年に国立成育医療研究センターで導入され、国内での使用実績は長いです。
特徴
頭蓋誘導(除圧)型で、長期間(3~18か月)の装着が可能
型取りしたデータを治療する医師が専用のソフトを使用してヘルメットの形を決定します。出来上がった鋳型をもとに工場でヘルメットが作製されます。治療する医師によってヘルメットの形状に違いがでる可能性がある一方、赤ちゃんの頭の形や月齢に合わせて形状や大きさを細かく調整することが可能です。※2
医療機器承認番号:23000BZX00094000
費用
治療院によって金額は異なります。
京都田辺中央病院のHPでは治療費込みで44万(税込み,2023年4月)とありますが、赤ちゃんのあたまのかたちクリニックでは59.5万となっています。
リモベミー(グンゼメディカル株式会社※旧株式会社メディカルユーアンドエイ)
概要
国産の除圧式ヘルメット。ミシガン頭蓋形状矯正ヘルメットの日本バージョンになります。ミシガン式ヘルメットを取り扱うグンゼメディカル㈱が取り扱っており、ミシガン式と合わせると10年以上の使用実績があります。
特徴
頭蓋骨に圧力を加えずに平坦部を除圧し、頭蓋の成長を誘導するタイプのヘルメット。
前方と後方の2つのパーツから成り、調節用のスクリューで頭の成長に合わせてサイズ調節が可能です。
外装は硬質プラスチック、内装は柔らかいフォーム状ライナーで、穴が開いているのでムレを防ぎます。
医療機器承認番号:30400BZX00118000
費用
医療機関によって費用は異なります。
京都田辺中央病院のHPでは治療費込みで44万(税込み,2023年4月)とありますが、赤ちゃんのあたまのかたちクリニックでは59.5万となっています。
Ai-met NEO(株式会社イーアールディー)
概要
株式会社ジャパン・メディカル・カンパニーが製造・販売している「アイメット」の進化版の1つでアイメット開発者の手によって改良されたヘルメットになります。
アイステーションクリニック※というヘルメット治療専門のクリニックでのみ取り扱われています。
※2019年7月日本で初めての赤ちゃんの頭蓋健診・矯正治療専門医療機関として開院し、開院から4年間で4000人余の乳児の頭蓋矯正治療を実施。
特徴
お首の座っていない低月齢からでも装着が可能です。
ヘルメット本体、クッションともに水洗いできます。
医師がヘルメットの造形をデザインしています。
費用
不明
プロモメット®(株式会社山口補装具)
概要
ミシガン式頭蓋矯正ヘルメット日本版。医師と共にアメリカで研修して技術を習得し、2011年より今日まで国立成育医療研究センターで約500症例以上の臨床経験を積んだ義肢装具士が手掛けるヘルメット。
特徴
頭蓋骨に圧力を加えずに平坦部を除圧し、頭蓋の成長を誘導するタイプの2分割式ヘルメット。
医師と緊密に連携してお子様一人ひとりに合わせた正にオーダーメイドのヘルメットを制作する。子どもに寄り添った装具として取り扱うため、医療機器登録はしていない。
中性洗剤などでの洗浄や丸洗い可能で衛生的。
費用
医療機関によって費用は異なります。
赤ちゃんのあたまのかたちクリニックでは59.5万となっています。
夢人(補装具工房スタンス株式会社)
概要
国立成育医療研究センターで研修し、頭蓋誘導2015年からヘルメット療法に携わり900症例以上の経験を積んだ義肢装具士がヘルメットの作製から装着後の調整まで一貫して行っています。HPはこちら。
大阪の高槻病院や兵庫県立こども病院で取り扱われています。
特徴
頭蓋骨に圧力を加えずに平坦部を除圧し、頭蓋の成長を誘導するタイプの2分割式ヘルメット。
特殊素材の吸水インナーは洗濯機で洗濯可能。
費用
大槻病院では初診3万、ヘルメット治療費45万の計48万円(2023年1月)。
参考文献
※1 ミシガン頭蓋形状矯正ヘルメットの導入による変形性斜頭・短頭治療の取り組み
https://www.niigata-kouseiren.or.jp/wp-content/themes/niigata-kouseiren/mm-file/31_1/12-18.pdf
※2 京都田辺中央病院HP